ジャックニコラウスと言えば4大メジャー大会18勝(マスターズ6回、全米プロ5回、全米4回、全英3回)を誇り、ゴルフの「帝王(モナーク)」と呼ばれる名プレーヤーです。
1935年のジーン・サラゼン以来史上4人目となるキャリアグランドスラムを達成したのは1966年ですが、その後は2000年のタイガーウッズまで34年間も達成する選手が現れない困難な記録です。
更に1978年には4大メジャーで3勝以上のトリプルグランドスラムも達成し、加えて4大シニアタイトルも取りメジャーと両方の4大タイトルをとった唯一の選手でもあります。
また、日本人にとっては1980年にニューヨーク近郊の「バルタスロールゴルフクラブ」での「第80回全米オープン」に於いて、青木功選手と四日間同じ組での歴史に残る死闘を制して優勝した事も記憶に刻まれています。後年私がこのコースでプレーした際に、クラブショップで当時の闘いをモチーフにしたトレーナーやTシャツが販売されていたのを見て誇らしく思いました。
尚、この時の青木選手のメジャー大会2位は2021年に松山英樹選手がマスターズで勝つまで41年間に亘り日本人選手の最高記録でした。
ジャックニコラウスはこのような伝説の名プレーヤーですが、ゴルフコースのデザイナーとしても素晴らしい才能を発揮し、世界各地で約180か所もの名コースを生んでいます。
彼のコース設計思想は明確で、「Visibility」と「Containment」と言う二つの概念に集約されると言われています。Visibilityとはティーイングエリアからコース全体が見渡せて戦略が立てやすいと言う事です。Containmentはボールがなるべくコース内に留まるような形状にする事です。例えばフェアウェイは左右を高くしたり、グリーンはお椀状ではなくすり鉢状にしてボールが簡単に転がり出ないようにすると言ったもので、これらはプレーヤーの立場から良いショットは報われるべきとの思想です。但し、これらはあくまで概念であり、実際のコースは自然の地形や美しさを存分に活かしながらも、池やバンカーなどのハザードが戦略的なレイアウトで配されて事が多く、むしろチャレンジングなコースも沢山あります。
日本でも彼の関連するゴルフコースは全国に約30か所近くもあり、いずれもダイナミックで美しい景観と戦略性を兼ね備えたアメリカンスタイルのコースとして有名です。中でも難易度が高くて有名なのは「北海道クラシックゴルフクラブ」や「石岡ゴルフクラブ」「オークモントゴルフクラブ」などです。そして千葉県には恐らく彼の最後の作品となるであろうと言われる2016年開業の「東京クラッシッククラブ」と今回ご紹介する「上総モナークカントリークラブ」があります。
この「上総モナークカントリークラブ」もうねったフェアウェイ、多くのバンカー、アンジュレーションのきつい高速大型ワングリーンなどニクラウスの設計らしい戦略性の高いコースレイアウトで難易度の高いコースです。房総半島のほぼ中央に位置する丘陵コースで、どのコースも緩やかな傾斜があり、ティーイングエリアからコース全体が見渡せるニコラウスの設計思想が反映された造りです。最も高低差が多きいのはアウト8番ホールで滝の上から20mも下のグリーンを狙うスリリングな名物ショートホールです。
また手入れが行き届いた美しいコースと丘の上に建つ白亜のクラブハウスは映りが良く、多くのゴルフテレビ番組の舞台ともなっています。
スターティングホール手前の丘には設計者ジャックニコラウスの座った姿の銅像があり、パッティンググリーンで練習するプレーヤーを優しく見つめています。
特に2021年にリニューアルオープンしたばかりのクラブハウスは、白を基調とした美しい外観を持つ北欧の王宮を思わせる壮大な建物です。木目調の上品な内装のロビー、真新しく機能的な設備のロッカールームやお風呂、開放的な吹き抜けの天井とコースを見下ろせる大きなガラス窓のレストランも快適です。以前は宿泊施設も併設していたそうですが、現在は休止していました。
「上総ゴルフクラブ」と言う名称で開場したのは1984年で、当時羽振りの良かった金融会社が多額の資金をつぎ込んで豪華なコースを建設しました。その後幾度か経営者が変わり、名称も変更して今日に至ります。「モナーク」の名称は設計者であるゴルフの帝王ジャックニコラウスをイメージして付けられたと言われますが、一説には北米大陸に生息し南北に3000㎞も飛ぶ飛翔技術に優れた渡り蝶の「モナーク(オオカバマダラ蝶)」からとったとも言われています。その飛距離への憧れでしょうか?
それでは主なホールを見て行きましょう。1番ホール(554ヤード、パー5)出だしは広々とした距離のあるロングホールです。緩やかな打ち下ろしでフェアウェイはややS字を描いていますが伸び伸びとクラブを振る事が出来る気持ちの良いホールです。
2番ホール(347ヤード、パー4)は更に広々としたホールで、距離も比較的短いのでパーが狙えますが、フェアウェイの左右にクロスバンカーがあるので注意が必要です。
3番ホール(157ヤード、パー3)グリーンが左右に広いショートホールです。グリーン手前の大きなガードバンカーに捕まらないよう気を付けてピンをデッドに狙いたいです。
4番ホール(410ヤード、パー4)は比較的距離のあるミドルホールですが、ティーイングエリア正面に大きな池があり、ティーショットに際にはプレッシャーを感じます。対岸は池に向かって下り傾斜がきつく、しっかりとフェアウェイを捉えないとボールが戻って池に入ります。池を越えるとフェアウェイは大きく左にドックレックしているので、右側から攻める必要があります。
7番ホール(344ヤード、パー4)比較的短いミドルホールですが、220ヤード付近にはフェアウェイを横切るように大きなガードバンカーがあり、ティーショットの飛距離によっては障害となります。
8番ホール(177ヤード、パー3)山の頂上から谷底の池を越えた先に小さく見えるグリーンを狙う名物ショートホールです。箱庭にように美しいホールですが、距離もあり風の影響も受けやすく、心理的なプレッシャーも大きいのでグリーンを正確に捉えるのは難しいホールです。
10番ホール(539ヤード、パー5)バックナインの出だしもコース全体が良く見えるニコラウス設計らしい打ち下ろしのロングホールです。緩やかに左にドックレックしたフェアウェイの左側には大きな池があるので、右の斜面方向から安全に攻めて行きたいです。グリーン右手前には大きなガードバンカーが隠れているので要注意です。
12番ホール(122ヤード、パー3)広々としたフェアウェイの先に大きなグリーンが広がるショートホールです。グリーン周囲は中に島がある大きなバンカーを含めて沢山のガードバンカーに囲まれているので、これを上手く避けてパーを取りたいホールです。
13番(381ヤード、パー4)はフェアウェイが途中で寸断されている打ち下ろしのミドルホールで、先にあるフェアウェイは無数のクロスバンカーで囲まれている印象的な名物ホールです。クロスバンカーに続いてガードバンカーがグリーンを囲んでいてバンカーは全部で13個あり、見た目はまるでルーレットのようで、どこかのバンカーには捕まる事を覚悟したくなります。
15番ホール(500ヤード、パー5)ここもフェアウェイが二つに分かれているロングホールで、二つのフェアウェイの間に大きなバンカーが横たわっています。セカンドショットで上手くこのバンカー群を越え、右にドックレックしたフェアウェイの先にあるグリーンを狙う必要があります。しかし、グリーン右手前にはまた多くのガードバンカーが待ち構えているので、遠回りでも左側から攻めるのが安全です。
16番(179ヤード、パー3)ティーイングエリアの左側に大きな池が広がるショートホールです。フェアウェイの左側は池に向かって傾斜しているので特にドローヒッターは十分注意が必要で、グリーン右手の斜面を狙うのが安全です。
18番ホール(349ヤード、パー4)最終ホールは尾根の上を白亜の美しいクラブハウスに向かって真っすぐに戻る比較的短めのミドルホールです。左手には10番ホールの間に大きな池がありますが、さほど気になりません。むしろ池を避けて右方向を狙うと直ぐにOBラインやクロスバンカーがあるので気を付けたいです。
最終ホール脇には「Tee-Up」と言うゴルフスクールも併設されています。
都内からでも車で1時間少々と言う便利な場所でありながら、クラブハウスもコースも海外のリゾート地であるかのような美しく優雅な雰囲気が楽しめます。
上総モナークカントリークラブ
住所 | 千葉県君津市柳城856-2 |
電話番号 | 0439-29-3100 |
ウェブサイト | https://www.kazusamonarch.com/ |