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【養老】養老天命反転地 – 新たな自分に出会えるかもしれない破天荒な公園

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みなさん、「養老天命反転地」って何かご存知ですか?養老天命反転地は岐阜県養老郡にある公園なのですが、“日本一破天荒な公園”と言われています。もしかしたらSNSで写真だけ見たことある方もいらっしゃるかもしれません。かく言う私もSNS上で養老天命反転地のことを知り、興味を持った一人です。今回は、その魅力を実際に訪れた感想を交えてご紹介していきます。

養老天命反転地とは

「養老天命反転地」は世界的美術家/建築家の荒川修作氏とそのパートナーであるマドリン・ギンズ氏作のアート/建築プロジェクトで、1995年に開園しました。

天命反転とは、荒川氏とギンズ氏が追求し続けた芸術の形のこと。死へ向かう宿命、神から授かった命、つまり自分の意思ではなく“天命”を覆そうという彼らの思想を具象化したものが「養老天命反転地」です。長年の研究の末、人間が身体の無限の可能性を可能性を活かす事によって、未来を希望あるものに転換すべきだ、という結論に至りました。養老天命反転地はそれを実証するための実験的な作品であり、ここでは、人間に眠っている本能や五感をもう一度目覚めさせて、もう一人の新しい自分を作ることがテーマになっているのだそう。

五感を目覚めさせる建築とは一体どういうものなのか、みていきましょう。

養老天命反転地内は平行・垂直な線が極力排除されており、人工的な地平線が多く造られるなど平衡感覚や遠近感を混乱させる仕掛けが施されています。地面も急な勾配のところがあったり、ゴツゴツした足場だったりと、壁に手をつかなければ転びそうになることも多々ありました。これは、私たちをよちよち歩きの子供の頃に戻し、世界を初めて知りはじめた頃のように、知覚を再構築させるようになっているとのことです。

なにはともあれ、非常に歩きづらいところなので、訪れる際は履き慣れたスニーカーを履くことをおすすめします。私は歩きやすいサンダルで行ったのですが、少しソールの厚みがあるもので、結構怖いところもありました。

養老反転地記念館

入場してまず目に入るのがカラフルで色鮮やかな「養老天命反転地記念館」。養老天命反転地開園の2年後、1997年に完成した建物なのですが、元々は養老天命反転地のオフィスとして使用されていたのだそう。

カラフルで迷路のような建物内は子供たちが楽しそうに動き回っていました。

実はここ、床と天井が双子構造になっています。そのため、天井と床をひっくり返しても景色が変わりません。こんな風に、まさに天井から落下しちゃいそうな写真も撮れちゃう。

昆虫山脈

「養老天命反転地記念館」を出て、進んで行くと、ゴツゴツとした岩が積まれて山のようになっている所があります。ここが「昆虫山脈」です。この岩の山脈は登ることができ、頂上には水を組み上げるポンプ(となりのトトロで、サツキとメイが水汲みをする井戸に似ている)があります。ポンプからは実際に水が出てきて気持ちいいのですが、その水を求めて一生懸命山脈を登る人々を昆虫に見立てているのだとか。

メインパビリオン①「極限で似るものの家」

養老天命反転地には2つのメインパビリオンがあるのですが、そのうちの1つがこちら、「極限で似るものの家」。屋根が岐阜県の形になっていて、床には岐阜県とその隣接県の地図が描かれています。

中に入ると、ベッドやソファ、ガスコンロなどが、壁を貫通しながら設置されています。天井をみると、その家具がまた同じようにはめ込まれていたり、とにかく普通ではないのです。床も大きく湾曲していて、通路の幅も一定であることがなく、ここは家のようで家ではない、どこに自分がいるのか分からない感覚に陥ります。

▲ 天井にあるベッド。地上のもの同様、壁を貫通している。

「極限で似るものの家」を抜け、先へ進もうとするとこんな道が。歩いているといくつもの分岐があり、それぞれに名前がついています。<消えない道>、<しかしながらの道>、<どんな道>、<死なないための道>。この中で写真中央に見えるせりたった壁の方向に続くのは1本のみ。さあ、あなたはどの道を選ぶのでしょうか?
ちなみに私はどの道でもなく、道の上を歩きました(笑)

道の先の急勾配を登ってくるとこんな景色。近くには「精緻の棟」があります。この精緻の棟ではSNSでも人気の重力に逆らうような写真が撮れます!この時点ですでに疲れてそれどころではなかったけど、私も一枚撮っておけばよかったなあ。

メインパビリオン②「楕円形のフィールド」

もう1つのメインパビリオンがこちら、「楕円形のフィールド」です。「楕円形のフィールド」には先ほどの「極限に似てるものの家」を分割した9つのパビリオンがあります。何度も同じような建物に遭遇することで、知覚の混乱を引きおこそうとする意図があるのだとか。

パンフレットにもこのパビリオンではどのような事を考えて行動するのか色々と指針が書いてあるのですが、実はこのパビリオンには行かなかったので、実際にはどんな感じかも分からず帰ってきてしまいました。

運動路

なぜ私がメインパビリオンの1つ「楕円形のフィールド」の中に入って行かなかったのか。その理由がこの「運動路」にあります。

一番奥の壁、アレなんだろうね。あっ、この道通れば向こうまで行けるんじゃない?多分、壁の前にでて、そのまますり鉢の中に入ったり、反対側に脱出したりできるんだよ。よし、行こう!

こんな感じですり鉢に入る直前の道を歩いて行ったのですが、これが「運動路」で、まさに日頃の運動不足を解消してくれるような素晴らしい道だったのです。

最初は周りが見えていた道でしたが、すぐに自分の身長よりも高い壁が両サイドにそびえる道に変わって行きました。先も良く見えず一体どこまでこの道が続いているのか分からない状態。人間ひとりが歩けるくらいの横幅は、すれ違う人がいるとどちらかが壁にピトッと横向きにくっつけなければすれ違えない。その為、先に進むにも結構時間がかかります。歩くこと数十分(十数分かも)、ようやくたどり着いた先に見えた景色がこちら!どん!

うん!いい景色!自然が気持ちいい〜!!!気持ちいいんだけど、行き止まり!!!えーっ、この道戻らないといけないの!?という多少の絶望感。こうして元の場所に戻ってきた頃には精魂尽き果てて「もう帰ろう」となったのでした(笑)

「運動路」内も床がボコボコしているため歩きづらく体力を消耗し、疲れ果ててはいたのですが、何故か心の充実度がすごくて、心の底から「いい汗かいたね!」と思えました。なんでだろう。

きっと私のように運動不足でない方なら、「運動路」も「楕円形のフィールド」もどちらも楽しめると思うので、どちらも堪能してください。

終始足場が悪く、一生懸命踏ん張って歩かないといけない「養老天命反転地」で、作者が意図したように、もう一人の新しい自分が生まれたのかは確信が持てません。しかし、普段感じられない感覚に戸惑いを覚えたり、攻略することで達成感を覚えたりと色々な感覚が働いた気がします。

養老天命反転地

住所岐阜県養老郡養老町高林1298-2
電話番号0584-32-0501(養老公園事務所)
開園時間9:00 – 17:00(最終入場 16:30)
休園日月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
入館料【大人】770円
【高校生】510円
【小中学生】310円
※ 小中学生、高校生のみの入園は不可
ウェブサイトhttps://www.yoro-park.com/facility-map/hantenchi/