100周年を迎えた鳴尾ゴルフ倶楽部、日本のゴルフ黎明期に誕生し時代の荒波に翻弄されながらもゴルフ文化の歴史を紡いできました。
重機のない時代に自然の地形を活かし人力で造成されたコースは著名な英国人設計家C.H.アリソンの息吹を感じ、芸術的な美しさと難しさで日本を代表する山上のリンクスとして世界に知られています。
1903年設立の神戸ゴルフ倶楽部が日本ゴルフ発祥の地であることはご存じの通りです。当時神戸の居留地に住む外国人が六甲山上に別荘を構え、ゴルフコースも作りました。しかし、冬季山上は雪に覆われプレー出来ない為、1920年海辺に新しく鳴尾ゴルフ倶楽部が生まれましたが金融恐慌で土地所有者の鈴木商店が倒産して移転を余儀なくされ、1930年名前はそのまま現在地で再オープンする事になりました。
その翌年には広野ゴルフ倶楽部や東京ゴルフ倶楽部設計の為来日したアリソンによる改造が施されました。特にバンカーは地形の自然な歪みや高低差を巧みに活かし、エッジまで砂を摺上げる事で造形美を際立出せ鳴尾を象徴する景観が生み出されました。これがいつしか日本では「アリソンバンカー」と称されるのです。
大戦中の軍による徴用や戦後占領軍の接収と言う苦い歴史を経ましたが、今日も開設当時のレイアウトのままでプレーヤーを楽しませ翻弄してくれます。
クラブハウスは簡素な平屋造りながら、重厚な暖炉など歴史を感じる調度品の数々がプレーヤーを温かく迎えてくれます。
ところでラウンドしたプレーヤー皆が口を揃える難しさはどこにあるのでしょうか。
豊かな松林に囲まれ自然の起伏を活かした手作りコースは起伏が大きく、谷越えや狭くて曲がった複雑なレイアウトは距離の割にグリーン攻略を難しくしています。
小さなグリーン周囲のバンカーに向け流れ込む傾斜がボールを待ち構え、脱出には高度な技を要します。昨年日本シニアオープン選手権最終日に有名プロ選手がバンカー脱出に4打を要し優勝を逃した光景も忘れられません。
鳴尾ターフと呼ばれる高麗芝は葉が柔らかく横に伸びる特性があり、転がりも良く国内屈指の高速グリーンを誇っています。これも100年の歴史が生んだ財産ですがパットは繊細なタッチが要求されホールアウトするまで気が抜けません。
難しさは砲台グリーンを幾つもの深いガードバンカーで囲むショートで際立ちます。
4番ホールは打上げでティーグラウンドに立つと見えるのはピンの上と背後に迫る林だけというスリリングなホール。谷越えで8つのバンカーが囲む15番ホールに乗せられるのは上級者だけで、グリーンを果敢に狙ってバンカーに捕まり大叩きするのは私だけではありません。
限りなく美しく難攻不落のコースは「美しき魔物」とでも呼びたくなりますが、何度廻っても飽きない魅力を秘めた日本の誇りと言えます。それこそが「鳴尾」なのです。
鳴尾ゴルフ倶楽部
住所 | 兵庫県川西市西畦野字金ヶ谷1-4 |
電話番号 | 072-794-1011(午前8時~午後5時) |
ウェブサイト | https://www.naruogc.or.jp/ |