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日本でプロゴルフのシニアツアーが始まったのは1988年、年間11試合が開催され賞金総額は1億9000万円ほどでした。参加資格50歳以上のプロゴルファーによる熱き戦いが人気となり、バブルの頃には年間22試合、賞金総額も8億円以上になりましたが、バブル崩壊でスポンサー企業の撤退が相次いて一時は存続の危機に陥りました。しかし2000年代に入り参加資格の50歳を越えた青木功や中嶋常幸、倉本昌弘ら往年の人気選手が参戦すると人気が再燃し、試合数も年間15~20試合、賞金総額も最盛期と同等まで回復しました。
昨年は16試合(賞金総額7億2600万円)でしたが、2022年は14競技(賞金総額6億8400万円)とコロナの影響や女子プロ人気の余波なのかやや減少傾向です。
尚、主催する「日本ゴルフ協会(PGA)」は1957年カナダカップで中村寅吉が優勝し、ゴルフブームが起こった年に設立されました。かつてはプロツアーを主催していましたが1999年に「日本ゴルフツアー機構(JGTO)」が独立してツアーを運営することになり、現在主催するレギュラーツアーは「日本プロゴルフ選手権」のみとなりました。その結果「PGAシニアツアー」主催やプロ資格認定やゴルフ振興、ジュニア育成、社会貢献などが主な事業となっています。
因みに「日本プロゴルフ選手権」は1926年から続く日本で最も歴史あるゴルフトーナメントです。当初の名称は「全国プロフェショナルゴルファーズ優勝大会」で、第一回大会の参加者は優勝した中村留吉、日本のプロゴルファー第一号の福井覚治やPGA初代理事長の安田幸吉など僅か6名でした。競技は一日のみ36ホールストロークプレーでしたが、そこでは勝負がつかず、後日同スコアの二人によるプレーオフが行われたそうです。
その日本ゴルフ協会主催のシニアツアーの一つで毎年6月に開催されているのが「すまいーだカップ・シニアゴルフトーナメント」(賞金総額5億万円)で、開催コースは主催者である分譲住宅メーカー飯田グループホールディング(株)が保有する栃木県宇都宮市の「イーストウッドカントリークラブ」です。
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世界各国で250か所以上のコース設計を行いゴルフコース設計家の中でも実力・人気共に第一人者と言われる、名匠ロバートレントジョーンズJr.が造り上げた美しい自然の景観を活かしたコースで、フェアウェーは比較的広くフラットですが、池などのハザードを効果的に配置した戦略性の高い丘陵コースです。
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ロバートレントジョーンズJr.のコース設計の基本理念は「リスクと報酬」であることは有名ですが、イーストウッドCCもそれぞれ特徴がある18ホールは複数の攻略ルートがあり、難易度の高いルートを攻めれば好スコアに繋がりますが必ずリスクを伴います。従い、プレーヤーは各自の技量に合わせて最適なルートを選びスコアメイクする必要があり、技術だけでなく頭脳的なプレーを楽しむことが出来ます。
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コースのキャッチコピーは「水と緑のハーモニー」と言うだけあって、特徴的なのは多くのホールに巧みに配置された池でしょう。
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各ホールを見て行きましょう。アウトコースのスタート1番ホールは早速ティーグラウンド右手に池があります。この池を気にして左側を狙うと丘の向こう側にはOBが隠れているので注意が必要です。
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4番ショートホールは池こそありませんが、ティーグラウンドの目の前に大きな谷があり、実際の距離より長く見えプレッシャーを感じます。
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続く5番ミドルホールは414ヤードと長い上にフェアウェーは狭く、更にグリーンのアンジュレーションもきついアウトで最も難しいホールです。
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7番の池越えの133ヤードの短めのショートホールですが、グリーンは池とバンカーに挟まれているので正確なティーショットが求められます。
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そして次がグリーン手前でフェアウェーが池に向かって直角に曲がっている8番ロングホールです。池の向こうにあるグリーンの周囲にはロングヒッターの2オンを阻むかのように何と12個ものバンカーが待ち構える名物ホールです。
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更にインに入るとアウトコース以上に多くの池があり難易度が高まります。まず10番ホールは右にある池を避けるように大きくドッグレックしていますが、左側は谷が続くので馬の背のような狭いフェアウェーを正確に狙う必要があります。
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続く11番は184ヤードと長いショートホールで、フェアウェーからグリーンまでの間に大きな池が広がっています。池は右側奥に向けて更に多く広がるのでスライスボールは禁物です。
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13番は550ヤードと最も長く、全体がS字のように曲がっている美しいロングホールですが右手には谷が続き、左側にはグリーン手間まで大きな池とバンカーが待ち構え最も難しいホールでしょう。
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14番ショートホールも右手は池が続き、越えた先には大きなバンカーがあるので、フェードヒッターには厳しいホールです。
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16番は350ヤードで右ドックレックミドルホールですが、右側はグリーンまで池が続き、今度はドローボールヒッターにとって最後まで気が抜けないホールです。
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ここまで8ホール中5ホールに池が絡んできましたが、最終18番ホールに来るとようやく池もなく、フェアウェーも広いのでクラブハウスに向かって思い切り飛ばして行けるホールです。気持ちよく一日のラウンドを終えたいものですね。
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風格あるクラブハウスの壁面や柱は地元栃木県特産の大谷石で造られ、原石の割肌部分を活かした独特のこぶ出し仕上げですが、建物の内外にこれだけ豊富に大谷石を使った建物は貴重と言われています。そのため「大谷石百選集」と言う文献にも掲載され、その建築美が評価されています。
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そのクラブハウス内のロビーやレストラン、お風呂などもパブリックコースではありえない贅沢な造りとなっています。コースや設備の充実だけでなく、ランチの際にはビールなどを含めドリンクやデザートが無料でお代わり自由、コース途中の売店でも飲み物無料、更に風呂上りには懐かしいコーヒー牛乳が用意されているなど、プレーヤーに対するサービス精神は目を見張ります。
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このコースは総合商社の住友商事の傘下企業によりバブル期の1992年に開場し、当初は会員権が4,000万円の法人向け接待コースでした。その後同社の経営方針変更に伴い2002年に預託金を会員に全額返還の上で飯田産業に売却し、現在はパブリックコースとなりました。
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東京都心からはやや遠いですが、接待用に造られたクオリティーの高いコースが手軽に誰でもプレーできるようになりました。
シニアプロ開催の名コースはお得感満載です、気軽に楽しんでみませんか。
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イーストウッドカントリークラブ
住所 | 栃木県宇都宮市冬室町1039-3 |
電話番号 | 028-674-8848 |
ウェブサイト | https://www.eastwoodcc.jp/ |