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ゴルフのメジャー大会の中でも最も伝統と権威がある大会は「全英オープン」である事は誰しもが認めるところでしょう。
「The Open(ジ・オープン)」と呼ばれるように唯一無二の選手権であり、特に英国社交界では「ロイヤルアスコットダービー」「ウィンブルドンテニス」と共に華やかなスポーツの祭典と位置づけられ、ゴルフのステータスの高さを象徴しています。ワインジョキを模した「クラレット・ジャグ」と呼ばれる特徴ある優勝トロフィーも印象的ですね。
第1回大会が開催されたのは1860年10月の事、当時英国はフランスと共に清国とアロー戦争(第二次アヘン戦争)の最中であり、大会と同じ月には北京が陥落して「北京条約」が締結されています。日本は江戸時代で和暦では万延元年で、大老井伊直弼が尊王攘夷派の水戸浪士に暗殺された「桜田門外の変」の年でした。こんな時代に彼の地ではゴルフトーナメントが開催されていたとは驚きです。
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160年の超える歴史を持つこの大会ですが残念ながら戦争などでの中断もあり、最近では2020年の大会が新型コロナウィルス感染拡大で75年ぶりに中止を余儀なくされました。そして今年は150回の記念大会として、「The Open」を主催する「Royal and Ancient Golf Club of St. Andrews (R&A)」の所在地であり、「ゴルフの聖地」とも言われるあの「St Andrews Old Course」で7月に開催される予定です。
「全英オープン」の大きな特徴はあるがままの自然の状態を残したコースでプレーすると言う事で、海岸近くにある幾つかのシーサイドリンクスコースでのみ持ち回りで開催されると言うことでしょう。現在ローテーションに入っているリンクスコースはスコットランドなどの8コースですが、今年の開催コースであるSt. Andrewsのみは敬意を表して5年に一度必ず開催すると言う不文律もあります。
また、選手たちはしとしと降る冷たい雨や海からの湿った強い風などシーサイドリンクス特有の気象条件の中で戦うので他のメジャーと異なる試合展開になる事もあり、リンクスでのプレーを熟知した熟練の技を持つベテラン選手が好成績を収める事も少なくないです。
では日本のゴルフ選手がこの伝統ある「The Open」に参加してプレーするにはどのような資格が必要でしょうか。
全英オープン歴代優勝者や4大メジャー優勝者は無条件で参加資格を得ますが、昨年のマスターズを制した松山選手以外の選手はまずは開催年5月時点で世界ランキング50位以内などランキング上位入ることです。それが適わない場合には前年度の「日本オープン選手権」に優勝するか、国内賞金ランキングの上位2位に入る事で出場資格を得る事ができます。
そして大会直前まで残された道が開催年の5月に開催される「ミズノオープン」で2位以内に入ることなのです。(他の参加資格を有しない選手)
このように「全英オープン」はメジャー大会の中で最も多くの日本人選手が参加できる事も特徴であり、人気の高い競技となっています。
因みに全英オープンに初めて日本人選手が出場したのは1932年の宮本留吉ですが予選落ちでした。日本人選手の最高成績は1982年の倉本昌弘の4位ですが、2002年には丸山茂樹が最終日で首位に立ち初優勝の期待が高まりましたが残念ながら5位に終わりました。松山英樹はアマチュア時代の2022年に6位に入ったのはさすがでした、昨年の大会はコロナで欠場しましたが今年の活躍に期待が膨らみます。
さてこの「ミズノオープン」は1906年創業の世界的総合スポーツ用品メーカーのミズノが主催し、1971年から開催されている歴史あるゴルフトーナメントです。1998年からは「全英オープンへの道」と言う大会タイトルを付け「全英オープン」最終選考会であることをアピールしています。
大会会場は当初20年に亘り石川県の「朱鷺の台カントリークラブ」で開催され、その後岡山県の「JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部」での開催が続いています。その中で2018年、2019年に開催地となったのが茨城県鉾田市の鹿島灘に隣接する「ザ・ロイヤルゴルフクラブ」です。
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この「ザ ロイヤルゴルフクラブ」は「日本のゴルフを世界標準に」をコンセプトとし、100年後のゴルフも見据え「世界に通用するコース」「世界に通用する選手を育てるコース」を目指しています。そのため、全長は8,143ヤード、最長ホールはなんと700ヤードを越え、500ヤード越えのミドルホールや、ショットホールも300ヤード近くありコースレーティングは78.4と日本は勿論のこと世界でもあまり類を見ないモンスターコースとなっています。
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距離は長いですが元々は工場予定地と言うだけにコースの高低差はわずか2m以内とフラットで、フェアウェーも広々としているので伸び伸びとドライバーショットを打つことができるのも特徴です。しかし、二打目以降はフェアウェーが絞られ、マウンドや池が絡むホールが多く、粘りつく深いラフやアンジュレーションもきついグリーンなど世界の名コースに引けを取らないセッティングで、単に飛距離だけでなく高い戦略性や技術力が求められる難コースです。
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但し、ティーグランドは6つ用意されていて、プレーヤーの飛距離や技量に応じて選べるようになっています。それでも見栄を張って少しでも後ろのティーグランドを使うと大変なことになりますね。
スタートホール1番は真っすぐでこのコースでは短いホールです、しかしここで「なんだ世界標準ってこんなものか」と思ったプレーヤーは後で後悔すること必至です。
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それ以降は距離が長くて難しいホールが続き、特にFirst halfはほぼ全てのホールに池が巧みに絡みます。中でも9番ホールは池が大きくフェアウェーに入り込み、12番ホールではアプローチで大きな池を越す必要があります。
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ショートホールも総じて長いですが、特に17番はグリーン手前に大きな池が広がり、しかも距離が271ヤード、レギュラーからでも200ヤード以上あり、これホールで正確にグリーンを捉える事は至難です。
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そして名物ホールは16番ロングホールで、最も通りティーからの距離はなんと705ヤード、レギュラーティーからでも600ヤードを越え、いくら打っても届かないホールです。
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コースでは散々打ちのめされ、くたくたに疲れますが、ラウンドが終わればそこに寄木造りの床など木の風合いが感じられ温かみにある極上のクラブハウスと、細いところまでホスピタリティが行き届いた快適なサービスが待っています。レストランは壁一面がガラス張りで光に溢れ、コースを一望しながらゆったりとした気分でお料理を頂けます。
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ロッカールームや浴室も他では見た事がないほど広く、ゆとりと落ち着きのある造りです。
またクラブハウスに付随するロッジの部屋は広々としてラグジュアリー感に溢れ、落ち着いた色調とこだわりのインテリアでゆったりとくつろぐ事ができます。
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クラブハウス前には広大なパッティンググリーンが広がり、隣接する巨大なドライビングレンジは距離が350ヤードあり、天然芝から正式球を打つ事が出来ます。これらも正に世界標準と言えるでしょう。
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この「ザ ロイヤルゴルフクラブ」は1990年バブルの最盛期に「ザ ロイヤルオーシャン」の名称でオープン、その後1グリーン化などコースの改造工事を行って2017年に現名称で再オープンしました。
経営は「ゴルフをもっと愉しく」を合言葉にゴルフ普及活動にも力を入れている「東京レジャー開発」です。同社の母体企業は「カバヤ・オハヨーホールディング」傘下の牛乳や乳製品メーカー「オハヨー乳業」、コースは鹿島工業地帯にある同社の関東工場に隣接しています。そのため、コース内ではプリンや牛乳など同社の製品が試飲できるほか、工場直送で鮮度の高い製品がお土産として用意されていて好評です。
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東京都心からは首都高速湾岸線から東関東自動車道潮来IC経由で、コースまでは約1時間半です。但し、途中鹿島スタジアムの近くを通るのでサッカーの試合がある日は土浦北ICから常磐自動車道経由がお勧めです。尚、東関東自動車は現在潮来から鉾田まで延伸工事中で開通すれば利便性が増すと思われます。
あなたも「世界標準コース」で「全英オープンへの道」に挑戦してみませんか、必ずや衝撃を受けることでしょう。
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ザ・ロイヤルゴルフクラブ
住所 | 茨城県鉾田市大蔵200 |
電話番号 | 0291-39-7511 |
ウェブサイト | https://the-royal-golf-club.com/ |