日本が世界に誇る自動車メーカー「トヨタ」。2023年の年間生産台数では過去最高を更新しているほか、2023年の世界の自動車市場シェアは10%超えと日本だけではなく世界の自動車業界にはなくてはならない存在です。
そんなトヨタ自動車の創立50周年の記念事業の一つとして1989年4月に誕生したのが愛知県長久手市にある「トヨタ博物館」です。「トヨタ」博物館という名称ですが、トヨタ自動車の歴史を学ぶだけの施設ではなく、世界のクルマの進化と文化をたどる博物館になっています。
- アクセス
- クルマ館
- ZONE 1 1890-1910s 自動車の夜明け【黎明期】
- ZONE 2 1910s 自動車の急速な進化
- ZONE 3 1910-1930s 自動車の大衆化
- ZONE 4 1920-1930s 覇を競った豪華車
- ZONE 5 1920-1940s 日本における自動車量産の幕開け
- ZONE 6 1930s 流線型時代の到来
- ZONE 7 1930-1940s さまざまな自動車文化の競演
- ZONE 8 1930-1950s 第2次世界大戦後の新たな始動
- ZONE 9 1950s 米欧日それぞれの再出発
- ZONE 10 1960s 経済成長と加速するモータリゼーション
- ZONE 11 1970s 試練の時代 社会的課題への対応
- ZONE 12 1980s 新たな車種の誕生
- ZONE 13 20XXs 持続可能な未来へ
アクセス
トヨタ博物館は名古屋市内から高速道路を利用して約30分程度のところにあります。乗用車320台分の無料駐車場が設置されています。リニモ(東部丘陵線)「芸大通駅(トヨタ博物館前)」から徒歩5分と公共交通機関でも行きやすい施設です。ちなみにジブリパークからもリニモで2駅と近いですよ!
トヨタ博物館は「クルマ館」「文化館」の二つの建物で構成されていますが、今回はご紹介するのは「クルマ館」です。
クルマ館
展示室に入るとまず出迎えてくれるのが1階の「シンボルコーナー」にあるこちらのクルマ「トヨダ AA型乗用車」(1936年 レプリカ)。トヨタ自動車が初めて作った乗用車で、作られてから約80年以上が経過していますが、この博物館ではとても人気のある車なんですよ。
シンボルカーを背にしてエスカレーターで2階に移動すると圧巻の車両展示コーナーが始まります。2階、3階と2フロアを使用し自動車の黎明期から現代に至るまで体系的に展示しているのですが、トヨタ博物館の特に素晴らしい点は、140台ものクラシックカーがすべて動態保存であることです。もちろん展示室内でクルマが動いているわけではないのですが、100年以上前のクルマも現役で走れると思うとわくわくしませんか?また、エポックメイキングなクルマが展示されているため、ここに訪れれば自動車の歴史、またその当時の文化を学ぶことができるのです。
それでは、順を追って見ていきましょう。
ZONE 1 1890-1910s 自動車の夜明け【黎明期】
馬車に代わる乗り物として「自動車」が発明されたのは1769年のこと。蒸気の力で走る「蒸気自動車」が誕生し、その後は「電気自動車」が登場。実はなじみの深いガソリン自動車は1886年に誕生し、自動車開発における動力としては最後尾を走っていました。しかし、急速な性能向上から一躍自動車生産の主役となったガソリン自動車。その黎明期をこのゾーンでは紹介しています。
人力(馬力?)ではなく動力に変わったとはいえ、見た目は馬車のようです。ここからどのような変遷で現代の自動車になっていくのでしょうか。
ZONE 2 1910s 自動車の急速な進化
技術の急速な発展により、性能が飛躍的に向上するとともに、デザインにも変化が見られてきました。これまでのような馬車に似たスタイルではなく、車高が低くスマートなデザインに変貌を遂げた自動車ですが、この時代はまだ大衆の乗り物とは言えず、王侯貴族をはじめ一部の富裕層の嗜好品、道楽のツールでした。中でもロールスロイス「シルバーゴースト」は当時でも別格の車でした。
ZONE 3 1910-1930s 自動車の大衆化
ただ、シルバーゴーストのような高級車ばかりでは大衆向けのモビリティとは言えません。そこで、登場したのが1908年に登場した「フォード・モデルT」です。他のクルマが2000ドル程度の価格で売られていた中、850ドルという当時では破格の値段で販売され、大衆車のヒット商品となりました。
また、1912年に登場した「キャデラック モデル サーティ」は初めてセルフスターターモーターを搭載した女性や年配の方でも運転のしやすい車でした。これによって急速にモータリゼーションが巻き起こりました。
ZONE 4 1920-1930s 覇を競った豪華車
1920年代になると、航空機開発で磨かれたエンジン技術が自動車にももたらされ、飛躍的な発達期を迎えました。欧米各国の自動車メーカーが競って開発した豪華車や高性能車は、その造形美と高い技術力で人々を魅了しました。
また、様々な性能の車が生まれたことによりその速さを競うようになり、1900年の初頭には国際的なレースが生まれました。国の威信をかけて戦うレースのため、レーシングカーにはナショナルカラーを使用することが多かったそうです。
ZONE 5 1920-1940s 日本における自動車量産の幕開け
1923年の関東大震災で壊滅した東京の公共交通機関に代わって、市民の足として大活躍したのはアメリカから急遽輸入したT型フォードベースのバスでした。これが日本における自動車普及の契機となりました。
その後、日本では海外の車と競合しない小型車の量産が始まり、ダットサン(日産自動車)が一定の成功を収めていました。また、日産、現トヨタ、いすゞ自動車が日本政府の自動車メーカー育成の動きもあり本格的な自動車生産に挑んでいきました。
ZONE 6 1930s 流線型時代の到来
1930年代になると、飛行機の持つ流線型がやっと車にも取り入れられることになりました。シンボルゾーンに展示されていたトヨタ初の生産型乗用車「トヨダAA型乗用車」はアメリカの流線型のモデルを模してつくられたものです。トヨタ博物館ではこの2台が並んで展示されているので、見比べてみるのも面白いですよ。
また、1925年にフランス・パリで開催されたアール・デコ博覧会の影響で、化粧品や衣服などのデザイン様式が取り入れられるようになったのもこの頃です。
ZONE 7 1930-1940s さまざまな自動車文化の競演
欧米各国ではそれぞれの国に合わせた個性的かつ高性能な自動車が数多く誕生しました。富裕層がオーダーメイドで作った自動車はもはや工芸品です。
ZONE 8 1930-1950s 第2次世界大戦後の新たな始動
戦争終結とともに乗用車生産を再開したアメリカでは、タッカーなどの新興メーカーが自動車生産に参入し、ユニークなクルマ造りを目指しました。BIG3(GM、クライスラー、フォード)の戦後モデルには飛行機を参考にデザインされたテールフィンなど革新的なデザインも登場しました。ヨーロッパでも新たに自動車生産に取り組むメーカーが現れました。
ZONE 9 1950s 米欧日それぞれの再出発
日本は国土も狭く、原油や資源もないため、小さい車で燃費を稼がなくてはいけません。メーカーが切磋琢磨し、日本の社会情勢にあった車を模索したのが1950年代でした。
3階のシンボルカーとして展示されているのが「初代クラウン」です。
日本の狭い道路事情に合うよう排気量は1500ccとし、また、利用用途のほとんどがタクシーとしてだったため、観音開きの扉となっています。これがトヨタ自動車が社運をかけて初めてアメリカに輸出した自動車でしたが失敗に終わりました。
一方アメリカでは日本と異なり国土も大きく、原油も資源もあるので大きな車が人気でした。
当時のアメリカの最高峰の車と言えば歴代大統領専用車にも選ばれる「キャデラック」です。排気量も大きく、ラジオも搭載し、大きなテールフィンも大胆にあしらわれ、この時代の豊かさと自由さを象徴しています。
ヨーロッパではやはり国土の小さい国が多いことからコンパクトな自動車が盛んに製造されました。
ZONE 10 1960s 経済成長と加速するモータリゼーション
1960年代に入ると生活水準の向上により日本でも庶民が自家用車を持つ時代がいよいよ到来しました。
東名高速、名神高速、鈴鹿サーキットもでき、国内メーカーも試行錯誤しスポーツカーを生産しました。人気の高い「トヨタスポーツ800」とトヨタ博物館のお姫様「トヨタ2000GT」は一段高い"お立ち台"に展示されています。
「トヨタ2000GT」 は日本初の本格的グランツーリスモ車で、日常使いもしやすいようにロングノーズ・ショートデッキというデザイン的にも注目の自動車です。
ZONE 11 1970s 試練の時代 社会的課題への対応
1970年代は自動車業界にとって苦難の時代となりました。と、いうのも1970年にアメリカで厳しい排ガス規制が制定されたからです。そんな中はじめてアメリカの規制にクリアをしたのがホンダのシビックでした。
ZONE 12 1980s 新たな車種の誕生
日本車がブランドとして世界に飛び出していった1980年代。ライフスタイルの多様化により、SUV、ミニバンなど様々な車種が誕生しました。
ZONE 13 20XXs 持続可能な未来へ
そして現代。自動車の黎明期に様々な動力を模索していたように、現代もハイブリッド、電気自動車、燃料自動車と持続可能な社会を目指して動力を模索しています。自動車の今後はいったいどのようになっていくのでしょう。
クルマづくり日本史
クルマ館2階に常設展示されている「クルマづくり日本史」では、日本の自動車産業の歴史を紹介しています。日産自動車創業者の鮎川義介氏、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎氏の比較や、「動く年表」で日本の自動車産業の主要トピックスを知ることができます。
一台一台じっくりと鑑賞していたら時間がいくらあっても足りないほど充実した「クルマ館」ですが、それだけでは終わらないのがトヨタ博物館。次回は「文化館」についてご紹介します。
トヨタ博物館
住所 | 愛知県長久手市横道41-100 |
電話番号 | 0561-63-5151(代表) |
開館時間 | 9:30~17:00 (入館受付は16:30まで) |
休館日 | 月曜日(祝日の場合は翌日)及び年末年始 |
入館料 | 【大人】1,200円 【シルバー(65歳以上)】700円 【中高生】600円 【小学生】400円 ※未就学児は入場無料です。 |
ウェブサイト | https://toyota-automobile-museum.jp/ |