初秋の琵琶湖畔を訪ねました。
紅葉には少し早いですが、木々の葉が少しずつ色づき始めています。
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琵琶湖畔から少し内陸に入った栗東市、中央競馬会のトレーニングセンターが有名な馬の町に風格溢れる美しい36ホールのチャンピオンコース「琵琶湖カントリー倶楽部」があります。このコースで先月(2021年10月)日本を代表するプロゴルフメジャー大会「日本オープンゴルフ選手権大会」が開催されました。
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大会の歴史は1927年に始まり、この年は横浜の「保土ヶ谷カントリー倶楽部」で開催されましたが、まだアマチュアだった赤星六郎が二位になんと10打差をつけて優勝しています。
以来賞金ランキング上位20位までのトッププロやアマチュア選手権優勝者などが参加し、男子ゴルフ日本一を決めるメジャー大会となり、優勝者には賞金や副賞の他、5年間の無条件シードが与えられます。
琵琶湖カントリー倶楽部は日本オープンが始まってから約30年後の1959年に滋賀県で初めてのゴルフコースとして9ホール(栗東コース)で開場しました。きっかけは栗東町が東名高速道路開通を見越した町興し一環として計画し、地元滋賀県に多くの製造拠点を展開する有力企業ヤンマーディーゼル社に要請しゴルフ場建設が進められました。開業翌年の1960年に9ホール(琵琶湖コース)を増設して18ホールとなり、1968年には更に9ホール(三上コース)が増設されて計36ホールとなりました。
歴史ある「琵琶湖カントリー倶楽部」ですが、今では時代のニーズを先取りして資源循環に取り組む「自然共生型ゴルフ場」を目指しています。ヤンマーディーゼル社の太陽光発電システム等を利用したトータルエネルギーソリューションにより、ゴルフ場では日本初のCO2排出量実質ゼロのカーボンニュートラルを今年度中に実現すると発表しています。
設計は当時人気の名匠富沢誠三で、彼は日本初の36ホールコースであった千葉県の武蔵野カントリークラブ(戦時中に軍の接収により閉鎖され現在は自衛隊基地となっている)のグリーンキーパーからスタートし、大谷光明、赤星六郎、井上誠一などの著名な設計家の下で学び、その後息子の富沢廣親と共に国内外で100以上のコースを手掛けてゴルフの普及・大衆化に貢献しています。
当コースでは1993年に第58回「日本オープンゴルフ選手権大会」が開催され、その後も1999年に「日本女子プロゴルフ選手権大会」、2009年「日本シニアオープン選手権大会」、2014年「日本女子オープン選手権大会」等が開催され、日本を代表するチャンピオンコースとして様々なドラマを繰り広げてきました。
特に前回1993年の日本オープンはジャンボ尾崎選手の全盛期でしたが、伝説に残る死闘の結果、挑戦者奥田靖巳選手が最終日に二打差を逆転して優勝しています。当時はジャンボ尾崎、青木、中島選手の「AON」が8年に亘り日本オープンのタイトルを独占していた時代で、翌年1994年の59回大会ではジャンボ尾崎選手が大会最少スコアの18アンダーで5度目の優勝を飾り意地を見せています。
そして今年は二度目の「日本オープンゴルフ選手権大会」が開催されました。
結果は南アフリカのベテラン、ショーン・ノリス選手がジャンボ尾崎選手の持つ大会最少ストローク記録を27年ぶりに塗り替える通算19アンダーで優勝しました。
大会連覇を目指した稲森佑貴選手や2014年と17年の覇者池田勇太選手が必死で追いすがりましたが、ノリス選手が安定した戦いで二日目からの首位を譲らず逃げ切りました。このコースは傾斜や段差のある難しいグリーンをいかに攻略するかが勝敗の鍵と言われていましたが、下りのパットを残さない丁寧な攻めが実を結び、日本ツアー参戦6年目で日本一の称号を手にしたのです。
ウイニングパットを決めた後も派手なガッツポーズもせず、観客席に深々とお辞儀をする姿に日本にすっかり馴染んだノリス選手を見た思いがしました。
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尚、前回1993年の日本オープンで使用されたのは「三上コース」と「栗東コース」でしたが、今回使用されたのは「三上コース」と「琵琶湖コース」の18ホールで、全長6,986ヤード、パー71でした。
「琵琶湖コース」はこの大会のため、かつて全英オープンを二度制して世界ランキング1位にも輝き、ホワイト・シャークのニックネームで有名なオーストラリアの名選手グレッグノーマンの監修により大改造されました。
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幸いにもこのメジャー大会開催の1週間前にこの「琵琶湖カントリー俱楽部」でプレーをする機会がありました。
しかし、メジャートーナメント仕様に向けた整備が終盤を迎えていたコースは狭いフェアウエー、深いラフ、早いグリーンと言う難易度が立ちはだかり、これに向かう術もなく撃沈される結果となりました。
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ではコースを見て行きましょう。
1959年にオープンして以来既に60年以上が経つ「栗東コース」は大きく育った松林で完全にセパレートされた風格漂う林間・丘陵コースです。フェアウエーはフラットですが距離は十分あり豪快なショットが楽しめます、しかし周囲の木々は密集しているので林の中に打ち込むと脱出には苦労する事になります。
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1番ホール(501ヤード、パー5)フェアウエーの左右に松の木がそびえ立ち、緩やかにS字を描くイメージとなっています。これを上手く避ければ距離が短いのでバーディーチャンスが生まれます。
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2番ホール(181ヤード、パー3)やや打ち上げのショートホール。真っすぐですが左側はOBラインが続くのでフックボールは禁物、傾斜のきつい二段グリーンも難しいです。
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3番ホール(367ヤード、パー4)真っすぐでフラットなミドルホールですが、フェアウエー中ほどには左右にクロスバンカーがあり、ティーショットは注意が必要です。横長のグリーンは左右が高いすり鉢状でパッティングの距離感が難しいです。
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4番ホール(428ヤード、パー4)距離のあるミドルホールでティーグランド前には大きな池があり、ティーショットはついつい力が入ってしまいます。池の幅がやや狭い右側を狙うと前に林がせり出しているので、二打目ではグリーンを狙えない難易度の高いホールです。
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5番ホール(505ヤード、パー5)真っすぐでフラットなロングホールですが、フェアウエーの左右にはガードバンカーと高い松の枝がせり出し、グリーンの手前にはこんもり茂った立木がアプローチを妨げるように立っています。
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6番ホール(185ヤード、パー3)ティーグランドの前には左右に広がる大きな池があり、そこに映る対岸のグリーンが美しい印象的なショートホールです。距離も十分ある上にグリーン周囲には幾つものガードバンカーが待ち構え、難易度を上げています。美しい景色に見とれているとボールは池に吸い込まれて行きます。
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7番ホール(388ヤード、パー4)真っすぐなミドルホールでパーを取りやすそうですが、左右に大きなクロスバンカーがあり、グリーンも畝っているので簡単にはいきません。
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8番ホール(382ヤード、パー4)やや打ち下ろしのミドルホールですが、ティーグランド右手から大きな木がせり出し、正面左には大きなクロスバンカーが見えるのでティーショットを打つ際にプレッシャーを感じます。
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9番ホール(398ヤード、パー4)やや打ち上げで、フェアウエーは緩やかに左にカーブしながら右方向に傾斜しているので、左のカート道路方向を狙っていきたいホールです。
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前回1993年の日本オープンに続き今回も使用された「三上コース」はフラットながら様々なハザードが待ち構え、プレーヤーの腕が試される難コースです。湖東地域のランドマークで近江富士とも呼ばれる美しい稜線の三上山(標高432m)が名前の由来で、山麓には三上山をご神体として祭る御上神社があり、鎌倉時代造営の本殿は国宝に指定されているそうです。
1番ホール(530ヤード、パー5)こちらもロングホールからスタートです。ティーグランド正面には左右に広がる大きな池があり、その先のフェアウエー内には立木やクロスバンカーがあってフェアウエーを狭くしているのでティーショットはプレッシャーを感じます。
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2番ホール(394ヤード、パー4)真っすぐなミドルホールですが、右側には密集した高い木々とOBラインがグリーンまで続くので左側から攻める事がマストです。グリーン手前には大きなガードバンカーが幾つもあり、アプローチは大きめに狙いたくなりますがグリーン奥のOBにも必要が必要です。
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3番ホール(330ヤード、パー4)比較的距離の短いミドルホールですが、グリーンは右奥にあり手前には木もあってアプローチを難しくしています。またグリーンは左右二段に分かれて傾斜もきつく、コース中で最もパッティングが難しいと言われています。
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4番ホール(158ヤード、パー3)距離的には長くないが、ティーグランドの前を谷が横切りティーショットは距離感が掴みにくく、またグリーンの周囲を5つのバンカーがガードしているのでティーショットは注意が必要です。
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5番ホール(412ヤード、パー4)右にドックレックした距離のあるミドルホール。グリーンも細長く傾斜もきついのでパーを取るのは至難のホールです。
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6番ホール(374ヤード、パー4)はティーグランドの正面に池があり、池の先左側の大きなクロスバンカーから左にドックレックしているので、右を狙いたいですがそこには大きな立木がありティーショットの方向性が難しいです。更にグリーン手前にも立木があり、二段グリーンは傾斜がきつく慎重なパッティングが必要です。
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7番ホール(503ヤード、パー5)日本オープンでプロも苦戦してスコアが動いた難ホール。フェアウェーは左右からの傾斜が迫って細く、グリーンは左側の山の奥に隠れているので、右手の裾野を正確に狙っていく必要があります。小さな砲台グリーンの手前には左右に深いバンカーがあるのでアプローチが難しく、多くのプロが苦戦していました。
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8番ホール(170ヤード、パー3)ティーグランドの奥にある茅葺の日本家屋風休屋がテレビ中継でも目立っていました。やや打ち下ろしの真っすぐなショートホールですが、ガードバンカーは深く、グリーンも奥からの傾斜がきついのでプロもティーショットの落としどころによってはパーを取れない難ホールでした。
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9番ホール(387ヤード、パー4)は日本オープンの最終ホールとなる印象的なシグニチャーホールです。フェアウェーの真ん中に琵琶湖を模った大きな縦長の池があり、二打目でグリーンを狙うにはティーショットをリスクを恐れずに池の方向に打つか、スリーオン狙いでフェアウェー右手から安全に行くかの選択に迫られます。
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グリーンは細長い二段グリーンで中央部がくびれ、奥からの傾斜がきついです。またグリーン手前にあるガードバンカーは深く、日本オープンの最終日はピンが手前に切ってあったので、プロも池やこのバンカーに捕まる選手が多くドラマチックな最終ホールでした。
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東名高速栗東インターチェンジからわずか5分の好立地あり、滋賀や京都は勿論のこと大阪・神戸からのアクセスも良いです。
こじんまりしたクラブハウスは派手さはないですが、名門コースらしい上品な佇まいです。コースコンディションは最高で、キャディーやスタッフの方々の対応も良く、スコアはともかく実に気持ち良くプレーできました。
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琵琶湖カントリー倶楽部
住所 | 滋賀県栗東市御園513番地 |
電話番号 | 077-558-0121 |
ウェブサイト | http://www.biwakocc.com/ |